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TPPや減反廃止など

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TPPや減反廃止など平成25年末の農業農政問題

この数年、農業農政問題はマスメディアに大きく登場することは少ないでした。
ところが、夏過ぎからTPP交渉の進展への対応と、前民主党政権が創設して農村票をかっさらった「戸別所得補償制度」の踏襲を断ち切ろうと自民党安倍政権が思ったのでしょうか、「戸別所得補償」と「減反」の2つの制度政策の廃止など矢継ぎ早の農政見直しを打ち出したことで急に賑やかになってきました。

この状況を受けて「農業農政の現状やTPPに関しての農業現場からの報告をして欲しい」旨の依頼が幾つかありした。
これらに応えた文章に少し手を加えて、このHPに貼っておきます。ご笑覧下さい。

☆はじめに☆
環太平洋戦略的経済連携協定に向けての参加12カ国の交渉は、協定案の大筋合意を年内に行う日程でしたが、年明けに持ち越されたようです。新春以降にどうなるのか、まだ誰にも判らない状況のようです。  ところで、私は、ガット・ウルグアイランドの頃は、自由化に反対を唱えず、どちらかと言えば自由化容認派でした。  しかし今回のTPPについては少し違う判断をしています。  このような私の態度は、常に「絶対反対」を主張する農業関係者の中では少数派に属するようです。  また、TPPはISDS条項やラチェット規定で縛られるなど自由貿易の障壁を強制撤廃させる機能を持つなど今までにない複雑な協定です。その詳細をよく知っている訳ではありませんが、ガットからTPPに至るまでの貿易自由化問題について私の農業観が形成されたと思われる過程に触れながらお話ししたいと思います。

☆日本列島を900キロ北上して脱サラ農業☆
私は、むかし滋賀県職員として農業行政に携わっていました。この頃は戦後復興から脱して、前期高度経済成長期を経て後期高度経済成長期も終わろうとしている日本の絶頂期で農村から若者がどんどん都市部や他の産業に流れていました。農林省や府県の農業行政は、今日同様に「無定見、猫の目農政、ノー政」などと農家から揶揄されているだけでなく、行政マンであった私としても誇りが持ち難い面がありました。

一方、私が仕事で接する農業者は、素朴とは言うものの「米価を上げろ」「補助金よこせ」に代表されるように職業意識や自立心、社会性などというものとは無縁の人々ばかりで、まさに「この農民でこの行政ありき」「この農民でこの政治家あり」の様(さま)でした。  このように思っている時に「八郎潟新農村建設事業の入植者募集」の庁内合議決済文書が私の机に回って来て「旧来の農村から脱却した自律した近代農村農業の創設」という趣旨を見て個人的に興味が湧きました。  この個人的な興味を格好良く言えば、「将来の日本農業の転換発展に少しでも影響力を及ぼし関われるのは、行政の仕事を続けるよりもこの機に自らが農民になることが効果的だ。」と感じたのですが、実際には役人生活からの「落伍」というところかもしれません。  そこで7年余りの県職員生活を辞し、妻と5才の長女、3才の長男の家族4人で日本海沿いに900Km北上して大潟村に移住。今年で38回目の米作りをしています。

☆湿潤な泥沼の荒野を豊穣の地に☆
八郎潟で手に入れた田圃は15㌶ですが、田圃と云っても、八郎湖の湖底そのもの。湖の水を抜いた後に芦や雑草が生い茂った荒野で、当時一般に使われていた国産のトラクターは馬力が小さいことと、沈車するため使えないという湿潤で難儀な空間です。
従って、100馬力クラスのフォードやファーガソンなど輸入トラクターを湿潤な田圃用に改造して使うのですが、それでも時々沈車し、引き上げる為に隣近所のトラクターや湿地ブルを何台も動員し数日費やすこともありました。
このような田圃ですから、土壌が安定するまでの数年間は田植機が使えず、田植えは手植え方式です。田植え時期には、580戸の農家だけの我が村に毎日1万人近く、田植え期シーズンからその後に続く草取り作業までの稲作期間全体では延べ20万人をはるかに超えるパートの女性が半径50Km圏内から集り、股の付近まで足を取られ泥んこの脱出ゲームに大騒ぎすることがあちこちで見られたものです。

余談になりますが、八郎潟の国営干拓事業は景気浮揚策を兼ねて、水田を作るために昭和33年から堤防工事が始まり、同39年水が汲み上げられ、周囲50Kmの新生の大地が生まれました。
事業開始時は、終戦から10年余りの時期であり、日本は技術力も経済力も共に乏しく、世界銀行からの借款の見通しができたことで工事が開始されたものです。
その後農地や宅地などの造成工事が行われ、昭和42年から50年の間に580戸の「八郎潟新農村建設事業」に参画する人々が全国から集まりました。
この事業費は850億円ですが、当時としては、首都東京を移転するに等しい国策公共大事業でした。
また、昨今の公共事業は、機械化の進展で雇用を伴わないなど、景気浮揚効果が発揮できない経済構造になってきましたがに、当時の公共事業、とりわけ八郎潟の「世紀の干拓工事」の経済刺激や波及効果は甚大なものでした。

工事のスタートから10年後から米作りが始まりましたが、大潟村のGDPは毎年200億円近くになり、また、前述のように年間20万人を超える雇用を生むなどの他にも経済波及効果など地域社会に大きな貢献を続けてきました。
農水省は、工事完成後も、「どのような作物を、どのように作る経営をしろ」とか「減反をしろ」「従えば、補助金を与える」などと経営ノウハウの分野まで口出しを行って来たため、一時は将来展望が描けない状況におかれました。
このため私たち有志が「食管や減反を始めとした保護管理農政」を拒否する運動や行動を起こして「農水省の指導に従わない農業経営」を切り拓いた結果、国のインフラが活き素晴らしい新農村となりました。
私たちの農政運動展開中の秋田県民の世論のほとんどは、大潟村が秋田を中心とした地域社会に大きな経済波及効果を発揮していることなどには頓着無く「全国から集まったよそ者が、勝手な主張や行動をする。もう一度水を入れ昔の八郎潟に戻せ。」という発言が県議会で出たことが示すように、秋田は排他的でやっかみの強い県民性を持っており、これが今日の秋田の地方経済の衰退の原因の一つとなっているような気がします。

戦後の農政が「ノー政」と揶揄されている中では、八郎潟干拓事業のインフラは、農政の中では数少ない成功例の一つといえます。
この実証例が示すように、農政は経営者が担うべき役割である経営方法などノウハウまで口出ししたり、保護や管理を行ってはならないのです。国、公共の役割は、八郎潟干拓事業のような、効率的適切なインフラ整備やコマーシャルベースに乗れない基礎研究開発などだけに特定するべきことを教えています。

泥んこゲームの話の続きに戻りますが、この状況は、傍目には「さぞ難儀でご苦労なこと」のように写ったようですが、泥沼を田圃にしようと挑戦の闘志に燃えて取り組んでいる当人にとっては、逆に、愉しく充実した日々でした。
ところで、農民に転じてあらためて日本の農民を観察すると、行政側に居て感じていた以上に農業者の自立心や社会性が恐ろしく希薄なことに驚くと共に、身勝手無責任さに憤りすら感じることがしきりでした。

☆社会性のない農村農民☆
その一例を紹介すると、当時は食管制度によって、お米の価格は政府が決めていました。毎年夏には「米価値上げ闘争」が農協を中心に全国各地で展開されます。最後は東京九段の坂にムシロ旗を立てトラクターも繰り出した全国から動員された農民が集結。「米価値上げ」を絶叫し国会議事堂包囲の大デモを展開。保革の政治リーダーに農協幹部が圧力を掛けその年の米価が決定。
米は、見掛けの品質検査に合格さえすれば、味が悪くても、売ることに努力しなくても全量政府が買い取る。このため、農民は、単位面積当たりでは世界一化学肥料と農薬を撒き米の収穫量を上げることばかりに力を注ぎ、消費者のことは何も考えない。
米が不足する年には、農協青年部がさらなる値上げを求めて消費地への米の移送を妨害するため各地の米蔵の前に座り込む。彼らは、「我々は、国民の為に米を作っている。」と常々標榜しているが、不足時に米の移送を阻止するのは、実際には消費者のことは何も考えていない現れだという矛盾に気付きません。
「食管」は戦時中の食糧不足に対応して、お米の自由な販売などを禁止し、政府が全量管理した経済統制です。ですので、食管は農民が本来的に持っている販売の自由など営業権を剥奪するという農民にとっては不利益な制限制度です。
その規制・制限制度がいつのまにか利権と化して、食糧が余っているのに農民が「食管堅持」を叫んでいるのです。

また、ガットでの米の一部自由化の反対理由では「輸入すれば、耕作放棄田がでる。食糧不足になっても一度荒らせば美田は戻らない。」と声高に叫ぶが、長年田圃だったところが10年や20年一時荒れたからといって美田に戻せないとは、農業のプロがいう言葉ではありません。果敢に挑戦・努力さえすれば難なく出来るのです。
私たちは、泥沼の荒野を数年で豊饒の土地に変えたではありませんか。

余談であり、かつ語弊がありますが、この農民の心理や行動と似ている面があるのが原発問題です。  福島には「東京都民のために原発を引き受けた。」と社会のために犠牲的精神を持っているかのごとく話す方が多いようです。
でも、日本中探しても、地元民や立地自治体の首長や議会が反対した地域には原発はありません。更に福島原発事故では、地元の人々は大きな痛手を負った被害者ですが、また同時に原発誘致して世界中の人々に迷惑を掛けた加害者でもあります。
このような方々の一部でもが、当事者の社会責務として「原発ゼロ」の運動を真っ先に立ち上げて当然と思いますが、福島から未だにこのような運動は沸き上がってきません。

大潟村で米作り農民になって多くの農民と同じ立場にたって日本の農村農民を観察してきた私にとっては、地方、農村農民は、今まで紹介した以外にも、自己責任観、自立に向かう努力、社会性などには希薄で無縁な人種だという事例を嫌と云うほど目にしてきて、「自由化猛反対」の農民や福島の人々の性癖がよくわかるように感じます。

ちなみに「近代的な自律した新農業新農村」を目指した我が村の農民と一般の農民との違いにふれておきます。
全国から集まった大潟村の農民のほとんども、残念ながら世間一般の農民の感覚と同様でした。でも、このような問題に疑問や異議を感じるの農民が、一般の地域よりもほんの少しは多い比率で混じっていたのがせめてもの救いでした。

☆ガット時期の自由化は日本農業の将来にとっても有効だった☆
さて、昭和23年ガット以来の自由貿易推進の中で、農産物自由化を求める日本への要求は何度も周期的に高潮しました。
この時々に、前述のように農協や農民は「猛反対」の主張と政治圧力を展開し、一部自由化に向けた措置はあったものの、彼らの主張は今までほぼ認められてきました。
この農協農民の主張は「既得権益の死守」に尽き、その中には、国際的な飢餓問題や食糧安保論、或いは前述の耕作放棄田問題に類する国土保全論なども唱えてはいるものの、それらは、体裁作りの詭弁・言いつくろいに過ぎず、社会性のある主張に接したことはありませんでした。

ところで、今までの説明によって私は、農村農民をことさら偽悪的に捉え憎しみに満ちている者と誤解されるかも知れませんが、決してそのような偏見を持っているのではありません。
農民に革新性や社会性が育たず、自立へのファイトが生まれなかったのは、藩政時代から「生かさず殺さず」におかれてきた長い歴史と、近世では目先の利益誘導によって票を得ようとする政治屋と農協貴族がコラボして作り上げた「日本ノウ政」によるものであり、農民は可愛そうな被害者だと思っているのです。

しかし日本の農業の現状や原因がどうであったとしても、日本で美味しくって安全な食糧を将来にわたり安定的に確保するためには、健全な職業観の確立した人材が日本各地の農村に育つように従来の農政の制度政策の転換などシステムの変革を先行させることが不可欠です。
ところが、いつまで待っても俵を票に利用する政治屋と農協の職業活動家に加えて、「原子力村」同様に東大を始めとした農業経済学界とずる賢い官僚が手を組んで日本農政の転換を阻み続けているのが実情でした。

こうした中にあって、ガット・ウルグアイランド期においては、世界経済社会が金融資本主義によって今日ほどに毒されていなかった時代でした。この時期に、日本が農産物の自由化に徐々にでも乗り出すことは、日本農政の根本的な革新や農民の意識改革の端緒に役立ち、日本農業の将来にとって大きな価値があると思っていました。
私は、このような背景や理由によって、ガット・ウルグアイランドの農産物自由化問題が賑やかな時代には一部自由化受入容認の主張をしていたという訳です。

☆TPPの問題その1☆
次ぎに今回のTPP問題に入ります。
TPPは、民主党の菅さんが2010年10月に参加検討を突然発表したことから幕が開きました。
その言い出しが唐突だったことで「Tとは何だ。」「2つのPは何だ。」「WTOやガットとの関連は」「非関税障壁とは何だ」などマスコミ情報だけでは理解できず日本中が大騒ぎになりました。世間の大方がおぼろげながらもその概要を理解したのは菅発言から一年以上経過してからです。
そして、日本で一番問題となっているのは、TPPは関税の全面撤廃を目指していること。ISDS条項やラチェット規定など今までの自由化交渉にない強権システムがあり、日本の農業に及ぼす影響だけでなく国民健康保険や郵貯など日本固有の文化に育まれた制度まで破壊される恐れがあるなどとして反対世論が沸き起こりました。

私は、これらの問題以上に、今回のTPPには根本的で致命的な問題を2つ持っていると思います。
そもそも自由貿易の促進の本来の意義は、欧米を中心としたブロック経済の台頭で日本などが阻害されたことが主因で世界大戦は起こった。この苦い経験を回避するために、ガットやWTOで組織的に世界の自由貿易を進めることになったものです。
ところが、今回のTPPは、環太平洋の国々だけが自由貿易協定を結ぼうとするのですから、WTOが目指す自由貿易促進とは真逆のブロック経済体制の再現だということになります。

実際にもTPPの今までの経過は、後から参加したアメリカが主導して中国などを押さえ込もうとするブロック体制の意図がありありとあり、WTOの趣旨に反したものだというのが第一番目の問題です。

☆TPPの問題その2☆
2つ目の問題は、いまアメリカの経済政策を実質的に支配しているのはフェアーな自由経済を目指す実体経済にかかわる人々ではなく、金融秩序の崩壊やファンドマネーの暗躍に疑問を抱かない「新自由主義」を信奉する一握りの金融資本主義者であり、TPP推進はその思惑に実質的に支配されているという問題です。

今日の世界経済情勢は、第二次世界大戦直後のガットやその後のWTO発足時代の先進経済大国が成長を続けた時代とは様相が大きく変っています。
世界経済をリードしてきた先進大国の経済成長はこの20年余りの間軒並み停滞し、新たな再生産への投資先を失った世界のGDP総額約70兆ドルに比して3倍から4倍もの余剰資金が生まれる時代だと言われています。
この余剰資金が金融工学というマジックで金融マフィアの投機資金となり、アジア通貨危機、リーマンショック、ギリシャなどEUの経済混乱など世界経済を攪乱するという、金融の本来の使命である実体経済の補完の役割を逸脱し、世界を股に掛けたマネーゲームが横行して実体経済活動の妨げになっています。

例えば、原油価格は、燃料などへの需要の増加や中東産油国の政情不安などによる供給逼迫や、その予想によって価格が上下するのが本来ですが、今の現状は、国際穀物市況と同じように、需給動向よりも、国際投機資金が何に向かったかに左右されるようになっています。

また、名実共に日本のトップ企業であるトヨタであっても昨年までの一時は、将来展望が持てなく危機に向うと囁かれたが、今年は大増益だと報じられています。
これは、トヨタの経営努力効果によるよりも国際投機資金が円から逃げ円安効果が生まれたことに尽きます。逆に投機資金が円に集中し、円高に向かえば実体経済活動の場で汗を流して働く日本の人々がどれほど努力しようと報われることはない「虚業が栄え、実業が衰退する」という経済構造が生まれてしまっているのです。

TPPは、以上のようにWTOが目指す自由化と逆行したブロック経済体制だという問題と、金融資本主義の弊害を顧みない新自由主義の思想に立脚していることの2つの致命的な問題を持っているために私はTPPには賛同できないと思っています。

TPPだけでなく貿易の自由化よりも先に解決しなくてはならないことは、金を金で買う投機のための虚業振興の理論を説く金融工学者にノーベル賞を出し讃えるのではなく、市場経済による本来の自由競争を妨げる無秩序な金融活動の規制など世界の人々が納得できるフェアーな新しい経済システムを構築することに英知を結集することが非常に難題ではあるが、今日の世界の緊急の課題だと思います。

☆国際化が更に進むことは止められない☆
誌面が限られていますが次に自由化に関連した「日本の農業、食糧生産」の現状と将来などについてふれておきたいと思います。
自由化断固阻止の農協組織の幹部活動家N氏を例に例えてみれば、田舎に住んでいるN家は今日の時代の標準的な家系です。そのN氏の兄弟など身内が10家族いるとすれば、その子供或いは孫などの家族の中には少なくとも数人が海外に勤務しているか留学しているはずです。そしてこの傾向は年々加速します。
このような時代を迎えた中では、TPPは問題協定だとしても、若しくはTPPが妥結に至らず流れたとしても、貿易の自由化はもはや誰にも止めることはできません。

どの商品やサービスも海外市場を目指さねばなりませんし、海外から人や物が来ることを拒むことはできません。農産物も例外ではありません。
しかし、農産物は、気候風土や賃金ベースなどの諸外国との生産コストハンディーを、工業など農業以外の産業と同様に合理化など経営革新や努力だけで乗り切り勝つことは、実際にはなかなか難しいのが現実です。
このため自由化が進み為替レートに大きな変動がなければ、輸入農産物が押し寄せ、国内農業には大きな影響が及ぶと思われます。

☆「強い日本農業の創設政策」はどれもが効果なく税金のムダ遣い☆
農政は「この対策」を口実として、実際には農村票集めのために、TPPに乗り出す以前からの民主党時代も、その後の自民党安倍政権においても様々な政策を打ち出しています。
その政策は、大きく分けて2つあります。

一つは農産物の輸出、農業の6次産業化、農商工連携での農産物の加工新商品の開発、農業経営の規模拡大や法人化、国内自給率の向上などの「強い日本農業の創設」系の政策です。
ところが、これらはいずれも、経営音痴の学者や官僚或いは評論家が描いた絵です。たまに成功事例がマスメディアで取り上げられることはあっても、それはトピックスに過ぎず、半年か一年で潰れているか鳴かず飛ばずで、経営モデルが確立した事例は全くないというのが現状です。
農産物の加工、新商品の開発、商品販売戦略など言うはたやすくとも、今までからの加工食品業界が経営や技術革新を日々続けても苦しい中に、農水省の「指導や補助金をあてにした農業者」が取り組んでも成功できないのは当然です。
また、法人化や経営規模の拡大戦略は、統計上は予想を大きく上回る結果で経過していますが、その多くは、農村集落の人々が寄り集まった「集落営農法人」や、戦時中の出征兵士の留守農業を守るために行われた「銃後の共同苗代」の類(たぐい)です。
すなわち、かつてのソ連のソホーズやコルホーズ、中国の人民公社をまねた時代錯誤な共同耕作組合に過ぎず、規模は大きくとも所得補償などの巨額な財政援助によりかろうじて維持できているだけの「強い農業経営」にはそぐわない集団主義あらわな「法人」です。

☆経営マインドの芽生えを破壊する直接支払い政策☆
2つ目は、「日本の田圃や緑と水、そして地方を守る。」というテーゼに根ざした政策です。

具体的には、農業生産物が安く経営継続ができないと田圃や畑が放棄され国土保全が出来なくなる。また、地方経済の崩壊防止のために「戸別所得補償」や「中山間地所得補償」などの直接支払いです。
この所得補償は、WTOが全廃を目指している生産物に対する補助金など直接的な価格補償の枠外として、各国固有の事情での直接支払いなどの財政援助策として認められている方法です。

欧米ではこの方式で実質的に自国の農業保護を行っている国が多く、フランスの例では、平均的な農業者の収入内訳は、所得補償など生活保護と同様の財政援助による収入が8割を超え、農産物の販売収入は2割程度に過ぎなくなったと言われています。
生活の糧(かて)のほとんどを所得補償に頼り、自らが生産し販売してマーケットから得る収入はほんの僅かだという構造になったのです。
このフランスでは、健全な精神を持つ意欲的な農民は、消費者の自由な選択によって販売収入を得て生活するという、生産活動が社会に評価されるか否かの関係が断ち切られ、農業を続けることは社会のお荷物になり下がったことだと感じるようになって、仕事に誇りが持てないと失望した優秀な人材が農村から去り、生活保護を受給することに疑問を持たない程度の感覚の農民が残ることになって、農民の質が落ちたという話を聞きます。

日本でも、この所得補償を民主党が米農家を対象に「戸別所得補償制度」として数年前に始めました。この結果予想通り、民主党に農村票が集まりましたが、経営マインドを持ちかけた自立心旺盛な農民の意欲を著しくそぎ、日本農業の改善どころか、健全な農民の誇りを奪い精神をむしばみ、農村社会にモラルハザードを招きました。
このように今までの発想での政策はことごとく失敗で、税金のムダ遣いでした。

☆耕作放棄が出れば、それを生かした農業再生のモデルが自然に生まれる☆
国内の米の消費量に見合った水田は現在でも約半分で十分です。
近い将来には、急速に進む高齢化と人口減少で3割の田圃で賄えると予想されます。
米だけでなく、野菜も花も果物も長きにわたり供給過剰です。
農産物価格は低迷し、最近の一般のサラリーマンや他の産業の経営者同様に、どの品目の農家の経営も先が見えずどん底です。
いずれの農産物も供給過剰で価格が安く、持続的な再生産可能な価格水準を割っています。
従って、すでに全国各地に耕作放棄地が出ています。
これは当たり前、当然の結果です。
この状況は困ったことではありますが、農業政策では解決できません。
農業政策による直接的な対応は不可能な問題なのです。
これが現実です。

この現実を直視せずに、農村票を集めようとして、耕作放棄を防ぐための補助金や直接支払いを出せば出すほど、生産構造の転換ができず、供給過剰が続き、さらに価格が下がります。
この悪循環を続ければ、自立や経営マインドを発揮しようとする意欲的な農民を疲れさせ、農村から追い出し、結局日本農業農村を根本から腐らし崩壊させます。

しかし、国際化時代を迎えても、素性の明らかな安心安全な国産農産物が将来にわたり供給されることや、今後円安と国際穀物市場の高騰や、人口減少の中で日本の経済力は落ち、食糧の輸入もままならない時代の来ることを考えれば、可能な限り国内自給率の減少を抑え、必要時には国内自給を高められる生産基盤を創ることが必要です。

このために今後の農政は、農民票を集めようとした不純な政策を行わず、現実的な視点に立って、農耕地の保全などインフラ整備の政策だけに特化して、「農業界の権益保護」という従来の政策発想規範を根本的に転換して頂きたいと願っています。

また、今日の日本農業の状況に悲観しなくとも大丈夫です。日本農村には、自立心が高く社会に甘えない、経営マインドを持つ生産者が僅かではあってもまだ残っています。
所得補償や補助金のバラ撒きなどによって、日本農業の生産構造の転換を防いだり遅らせたりするという政策の邪魔さえなければ、この人たちや新たに農業に参入する人たちが、余剰となった農地を活用して、輸入農産物よりも美味しく安心安全な高品質の農産物をコストを低減して効率的に供給する基盤を創ってくれます。

社会に不用なものは補助政策を行っても時代と共に消え、必要なものは直接的な振興政策が無くとも新たに生み出されます。
強い産業は、どの産業であっても元々このような「底力のある民力」に因(よ)ってこそ創(つく)られるものだと思います。
「民力」とは「優秀な人」「人材」です。
農業とて同じです。補助金や直接支払いは「人材創り」を妨げます。  重ねて言えば、今後「政策による妨害さえなければ」美味しく安心安全な農産物の安定供給は、私たちにお任せ頂いて大丈夫なのです。

最後に、今日現在の農政の動きにふれておきます。
TPPの年内大筋合意の予定時期が近づいた秋口に、安倍政権は「減反政策の撤廃」や「戸別所得補償の廃止」という大胆で威勢のいいのろしを上げたことは「遅しに失した」とは言っても、長年の保護規制農政からの転換だと期待を抱かせました。
しかし、その2ヶ月後の、来年度予算編成を迎えた11月末には「減反廃止」は農政の大転換ではなく単なる虚像だったことが見えてきたのです。安倍政権が馬脚を現したのです。
「減反廃止」とは、今まで農水省が主導してきた減反面積の配分事務を行わないだけで、減反を行う農家への「飼料米の作付け補助」など財政援助は手厚く拡大され、また「戸別所得補償」は民主党が創設した政策をそのまま続けるのは「自民党の沽券(こけん)に関わる」ということで一部いじくっただけに過ぎず「中山間地所得補償」など今まで以上の補助金や直接支払いをバラ撒いて、今まで同様に農村票確保に精を出す様子です。
もうこんな政策は一時も早く止めて頂きたいものです。
( 2013.12.10    TADASHI   KUROSE )

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