提携米通信2003年3月号

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無農薬田の除草機かけ作業  (2002年6月黒瀬農舎の田んぼにて撮影 )

冬の間はゆっくりできると思っていたら、あっという間に種蒔き準備の3月が来ました。
先月号では、JAS法による食品の表示の問題を取り上げましたが、これらに関連した問題を今号でも、もう少し取り上げてみたいと思います。

狂牛病騒動・雪印の事件・日本ハムの偽装問題・全農チキンの鶏肉偽称事件・「あきたこまち」や「コシヒカリ」などお米のニセ表示問題・香料などの添加物問題・・・・・・この2/3年の間で食品についての問題や事件が相次ぎました。
直近では、日本でガンなどの健康障害の発生の恐れが高いとして製造販売が中止された農薬が、輸入されて果樹などに使われていたという「無登録農薬事件」です。
これは、人体に危害が及ぶ恐れが強い問題ですから、早急な公権力による規制の強化が必要です。
これに対して、政府は、無登録農薬事件発覚から4ヶ月で農薬取締法を改正するというまれに見る迅速な行動を行いました。
ところが、スピード性は良かったものの、その姿勢や、中身はとんでもない内容だったのです。

「草取りに使うカモも農薬に・・・」などの見出しの1月頃の新聞記事をご覧になって「これって何なの・・・?」と思われた方も多かったでしょう。
これが、昨年秋の「無登録問題」から発した農薬規制強化の、なれの果てなのです。


カモも牛乳も木酢液も農薬取締法による農薬?
ところで、化学合成農薬などの開発利用は「農業にとって病害虫を簡単に防ぐなど非常に便利で人類にとって、とっても有益なもの。」と、かっては世界中で高く評価されていました。
ところが科学者であるレーチェル・カーソン女史は、散布した化学合成物質は、目的の病害虫だけでなく他の昆虫や植物も汚染し、また、それを食べた野鳥の死滅や、川や海の魚介類も汚染。その魚を食べるなどで人体も侵される。このような輪廻による危険を半世紀近く前に「沈黙の春」で訴え、それまでの世界中の人々の化学物質についての認識を変えました。
私達も「化学合成物質は、いかなるものでも、自然環境や人体にとって何らかの被害や負担があるので、できるだけ避ける。」という認識で無農薬や有機農業に長年取り組んできました。

半世紀前の感覚に止まる農水官僚
ところが、農水省の農薬についての認識は、「農薬は、人類にとって有益で幸福をもたらすものである。」という、ほぼ半世紀前のカーソン女史以前のままなのです。
「ほぼ」という言葉を挿入したのは、発ガン性・土壌残留性・急慢性毒性などが明らかに高い化学物質は農薬登録を拒否したり、登録更新を拒絶しているので、登録している農薬は「安全で有益なもの。」というのが農水省の正確な現状認識だからです。
そして、農水省は「農薬行政」や、この根拠法である「農薬取締法」の運用で、農薬業界の保護育成など官・業・政の権益拡大ばかりを追求してきたのです。
このような消費者市民を置き去りにした農水省の認識や行動は根本的に間違っています。
こうした中で昨秋「無登録農薬」問題が発生したのですが、農水省は、この事件を利用して、次のような手法で、さらに権益を拡大しようとしていることで「カモが農薬」の話になるのです。

「農薬は安全」 とする火事場泥棒の農水省
今まで農薬は一般的に、化学合成物質と同義語として用いられ「無農薬農産物は安心できる。」逆に言えば「農薬は危険である。」と世間で認識されてきました。
これは、先のカーソン女史の指摘のようにほぼ正しい認識です。
ところが、農薬業界の応援など官業癒着体質のために「登録農薬は安全で有益なもの。」としたい農水省にとっては、この世間の認識基準は、すこぶる不満です。
そこで、農水省は、今回のどさくさに乗じて「作物栽培中に病害虫などを駆除する目的に用いる物質は原則的にすべて農薬とする。」という「農薬」の定義変更作戦に出たのです。
ですから、化学合成農薬を使わないでアブラムシを退治することに牛乳やメリケン粉を用いれば、牛乳やメリケン粉も農薬登録が必要だという理屈です。登録を受けずに牛乳やメリケン粉や除草にカモを使えば、無登録農薬の違法使用と位置づけるという馬鹿げた発想です。
農薬登録を受けた牛乳やメリケン粉を使って栽培された農産物は、農薬を使っているのだから、化学合成農薬を使ったのと同じ。牛乳が安全ならば登録を受けた化学農薬も安全。という感覚に国民を誘導し、牛乳を使って作った野菜に「無農薬農産物」のラベルを貼れば表示違反。にすることを検討しているのです。
こんな馬鹿げたことができように農薬取締法の改正を先の国会で行い、目下、政省令など細部の検討に入っているのです。この法案は、規制緩和を標榜する小泉政権のもとで、更には、野党もチェックするどころか、こぞって賛成したというですから嘆かわしい限りです。

投稿者 kurose : :2003年03月01日