13年正月/農業農政問題あれこれ

謹賀新年 今年もご支援をお願いします。 PDF版

1357524396_047080800新年おめでとうございます。 皆様佳い新春をお迎え下さったでしょうか。

当地秋田のこの冬は、雪の少なくなった近年では珍しく早く寒波が来て、クリスマス頃より一面の銀世界が広がりました。

我が農舎では、年末はご予約頂いていたお餅などの発送作業が集中する中、何度か除雪機を動かす必要が出るという余分な作業も加わり大忙しでした。

大晦日から元日は「大雪の恐れ」との天気予報でしたが、年越しの夜は強風が吹き荒れたものの積雪はさほどでもなく、元旦は時折日も射してくれました。

我が家は、10年前までの父母が健在な時は、郷里の滋賀の実家に、各地に居る子供たちも集合して、お雑煮で新春を祝うことが恒例でした。 でも、父が100歳を超えて他界してからのお雑煮は毎年秋田になりました。

今年は関西に嫁いだ長女家族は不参加でしたが、首都圏に居る長男家族4人も大晦日に帰省し、大人6名、孫5名の賑やかな正月を迎えることができました。

ところで、昨年末の衆議院選挙。3年前にバラ色のマニフェストを掲げて私も含めて多くの国民の期待を集めた民主党は、政策理念が何もないことを次々に露呈。選挙公約を次々とホゴして、正に自滅自壊。自民党が圧勝しました。 しかし、今度の選挙は、国民に夢や期待を抱かせないどころか、逆に不安を感じさせるという、今までには例が少ない結果を生みました。

その原因は、膨らむばかりの国債残高問題など財政、尖閣問題やTPP、デフレ問題などの経済外交、そして重要な原発問題。これら個別毎の自民党の主張公約に賛同しない人々が多い中で自民党が圧勝する珍現象。

議席数で8割を獲得した新政権の得票率は4割程度に止まっているという実態。民意が反映しない選挙制度の改革が必要のようです。

 

TPPなど農業農政問題あれこれ

今号は年の初めに当たり、TPPを中心に農業農政問題について触れてみたいと思います。

TPPは「消費者のことを考えずに、既得権益にしがみついてる反社会的な発想の農業関係者などが反対。」= 利己的な悪人 「自由な経済活動を活発化させ消費者市民の利便性を追求する産業従事者が賛成。」= 社会貢献を目指す善人・・・・・という構図が民主党政権の主導の元で世の中に創られました。

このイメージ創りを始めた民主党の当時の首脳部や、この構図を広めた一部マスコミ評論家など経済関係者は、自民党親米派と同様に、次のように、短絡な妄想を抱いていたように思います。 「財政悪化や長期の景気落ち込みに陥った日本経済社会は、TPPに参加すれば輸出が伸び、再び経済成長の時代を取り戻せる。」と。

しかし、菅発言から1年余りが経過した今、TPP関係の議論は、当初の「賛成VS反対」「自由VS既得権益死守」などの二者択一から比べると、だいぶ成熟してきたようです。

例えば、TPPは、自由経済システムではない。医療や保険金融制度も、アメリカの言いなり、破壊される。TPPに参加しても輸出はほとんど伸びない。日本経済はかえって衰退する。雇用市場は狭まる。賃金は下がる。デフレを促進する。食の安全も脅かされる。…この他にもTPP加入の弊害は各分野に及び、TPPは日本経済にとってマイナスになるのではないかと言う疑問や指摘が聞かれるようになってきました。

中でも、TPPは、昭和恐慌から第二次世界大戦に至ったブロック経済の弊害を防ぐために昭和23年のガット以来自由貿易の推進を目指した理念とは真逆の「環太平洋のブロック経済思想」とういう側面があると言う指摘は、当を得ているように思います。

また、ウルグアイランド時代の世界の資本主義経済下では、金融は実体経済活動に有効に機能する役割を果たしてきました。

しかし今日では、先進国経済の成長停滞と共に、世界のGDP総額約70兆ドルに比して3倍から4倍もの余剰資金が投機資金となり、金融工学というマジックで、アジア通貨危機、リーマンショック、ギリシャなどEUの経済混乱など世界経済を攪乱するという「金融資本主義」によるマネーゲームが横行する時代となったという分析もあります。 また、どの先進国も「かっての経済成長の再来はもはやない。成長ない中の経済を考えることが大事。」という現実を直視しなくてはなりません。

この状況の中ではTPP議論よりも先に、金融資本主義に振り回される経済構造の現状をセーブするシステムの構築に世界の英知を集める必要があると思います。

しかし、安部新政権はこれらにお構いなく、結局は金融資本主義者に牛耳られたアメリカの政策に同調する道を選ぶ公算は高いと思われます。そして、国内農業へはその見返りに多額なバラマキを行うでしょう。・・・・結果、TPP打撃よりも、そのバラマキ政策で日本農業は骨抜きにされ崩壊に向かうでしょう。

ところで、日本農業に対する政策は、TPP体制が導入されようが、されまいが、誰もが農業に参入でき、誰もが自由な農業経営が展開できるように、所得補償や補助金漬けの農政を改めると共に、農業関係の既得権益を出来る限り取り払い、自立した経営力のある農業を創る政策に転換する必要があります。

米が余ったから「減反政策」、耕作放棄農地が出たら「復田政策」、農民が減れば「後継者育成政策や新規就農者生活補助政策」、農業所得が減れば「農業の6次産業化政策や農産物の輸出促進政策」等々多額な財政支出で手厚く対応してきた今までの農政。

このような過保護では自立した農業経営者は育たないどころか、優秀な若者は農業から去るのは当然。事実過去のどの政策も「補助金が切れればそれで終わり。」ムダ使いに終わっています。

輸出産業は長らく「円安」を待ち望んできました。でも、本当に円安になれば、原油や液化ガスも食糧も大高騰、油や食糧の輸入もままならない時代がもうすぐ来る可能性もあります。

農政は、所得補償や補助金のバラマキを止め、効率的な農地の整備など個々の農業経営者には出来ないインフラ整備に特化し、農業者の自立、経営マインドの向上を妨げないことを望んでいます。