「世界のジャポニカ産米と日本産米の競争力」セミナー

本日は「世界のジャポニカ産米と日本産米の競争力」セミナーへ参加してきました。

九州大学の先生が代表の世界のジャポニカ米研究グループの中間発表。

秋田県農業試験場の研究員もメンバーとして調査していると言うことで、秋田で開催されました。

実に午後1時から5時までの長丁場、その間にかけ足で6本の発表が行われました。

農業経済、農業経営、作物/栽培学、食味といった多岐に渡る内容で、大変面白い内容でした。

すべてを消化しきれたわけではないですが、それぞれの自分が気になったんてんを羅列していきます。

(発表の要旨ではなく、個人的に気になった点を抽出しています)

●世界のコメ需給の現状とTPP のシナリオ予測
-世界的な米の生産・流通・相場などの状況の解説と、TPP後の状況。
外国産ジャポニカ米の日本での相場は8千円/俵前後と予測。その価格に対して、日本産の品質格差/消費者のプレミア感を加味すると、日本米の相場は現在の2~2.5割安程度ではないか。(=秋田産こまち9千~1万円前後?)
-ちなみに、アメリカ南部のインディカ米は現在ハイブリッド米に変わっているが、それが美味しくないので、輸入しているメ-キシコが不満→ベトナム米の輸入が始まっている=貿易自由化でアメリカ産米がメキシコで淘汰される可能性もある?

●外国産ジャポニカ米 の食味官能試験による格付け評価システムの構築
-日本と中国で食味官能試験を実施。日本人パネラー(試験官)は結果のバラつきが少ないが、中国人はバラつきが多い。これまで官能試が行われていないことが原因。
-ただ、その中でも、試験をしていくと、日本人と同じような味の好みの傾向がある。
-但し、お米の硬さについては、日本人が軟らかさを求めるのに対して、中国人は硬さを好む傾向がある。
-香りについては、日本人の感じる新米の香りへの評価はあまりなく、香り米のようなコメの香りを好む。
※質疑応答の話として、味が美味しいのでインディカ米→ジャポニカ米に嗜好が変わる人はいるが、逆は少ない。

●黒龍江省産米は日本稲作にとって脅威か?
-黒竜江省は日本(北海道)の寒冷地稲作の技術/品種を取り入れることで生産が伸びた。
-過去35年で、年平均10%の生産量増加!!
-2005年に日本の生産量を超え(黒龍江省だけで)、一昨年~昨年で400万トン増…。昨年あたりは2千万トンを超えていると推測される。
-2005年の1戸平均が約7ha、最大は22ha→2010年は平均13.1ha、最大34ha。平均単収は594.5kg(日本の522kgを超えている)
-日本の田植え機も大量に入っている→寒冷地なので面積が広がっても直播ではなく移植。
生産費の比較では、10aあたり、所得が12,870円。対する日本は12,250円で、日本を上回っている。

→個人的に、耕作面積が大潟村に非常に近いのですごく興味がある経営体
→所得では、日本円換算で日本を超えている→中国では大儲けしているので、若手(後継者)が多く、農村に活気がある。

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その後の質疑応答等の中で気になった内容と感想

-日本の育種について
日本の嗜好がコシ系に偏っていることもあり、現在の育種傾向がコシ系となっている。
それは嗜好の問題で仕方ないが、結果として、現在開発されているお米はほとんどが元をたどるとコシが入っていることになる。
そのため、今後の育種では、近親間の交配になってしまうことでの多様性のなさ、生物的な問題などがあるのではないか、という話が出ていた。

-食味・育種における日本の優位性
日本がジャポニカ米の世界で勝てる点として、現時点での品質の良さ、食味官能試験や育種の際の評価などといった部分でまだまだ強みがある。
その強みを活かしていくことが重要であり、試験や育種といった面では、世界的なスタンダード作りを日本がすることが重要。
また、品質面では他国がキャッチアップされないように、日本は常に品質のブラッシュアップをしていかなければいけない。

と言う話だったわけですが、個人的に、
1.日本では品質/食味の向上より、現状では品質/食味を現状維持した上で、コスト/手間を削減する方向に進みつつある。
2.日本人(消費者)のコメへの関心の低下と共に、品質/食味への関心も低下、また高品質米を作ってもそれを評価できる日本人が減っているのでないか
→つまり、品質/食味を追求したところで、(机上/研究室レベルでの差異はあっても)販売する上での差別化にはつながらない可能性もあるのではないか?

ということを疑問におもったりしてみました。
また、途中で秋田産あきたこまち、台湾産コシヒカリ、ブラジル産コシヒカリのブラインド試食テスト(種類は試食評価後に開示)が行われました。

基準米となった国産米がイマイチ美味しくなかったこともありますが、台湾産コシヒカリとの味の差はそれほど大きくありませんでした。
ブラジル産コシヒカリは10kg3千円を切るディスカウント店で売ってる安いブレンド米といった感じ。

それでも変な匂いなどがあると言うわけではないので、一般的な定食屋で出されたら、美味しいとは思わないけど気にならないレベルです。
(少なくとも、西友の中国産米、イオンのアメリカ産米よりは格段に美味しかったです)

また、台湾産、ブラジル産共に水分量が12~13%だったようです。(通常は14~15%前後で、水分が多い方が美味しい(16%程度までならば))
水分量に関連する収穫後の乾燥調製・選別や精米、保管といった点は、気象条件や個別農家に依存する栽培技術などと違い、カントリーやライスセンターでの技術ですので、比較的すぐに改善がしやすく品質が向上するのではないかという期待(不安?)も感じました。
以上、まとまりのない文章ですが、大変興味深い内容でした。

また、セミナー後の懇親会も勢い余って申し込んだところ、ほぼ関係者の打ち上げ状態の中に入ることとなり、辛うじて秋田県試験場の知っている方が1名いたので助けられました。
ただ、酒が入ったら入ったでまた色々と面白い話もまた聞くことができ、懇親会に参加した価値は多いにあったと思います。
次回は、大潟村と規模的に非常に近い黒竜江省の稲作を見に行きたいなーと思いながら、家路についた春分の日。
家族サービスもせず申し訳ありませんでした。

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